コラム

【コラム】後継者は、決算書をどう見るか!?

【コラム】後継者は、決算書をどう見るか!?

筆者:大川原 基剛
後継者の学校 代表取締役
中小企業診断士

<後継者の財務>

「後継者は、決算書をどう見るか!?」

経営者には、経営者にとっての決算書の見方があります。
ただ、決算書を見て、売上高がどうだったとか、利益がどうなっているか、資産がどうか、負債がどうか、純資産がどうか、ということを見るだけではありません。

決算書の見方を知らないと、極端をいえば、ただ「売上が増えた!」「売上が減った!」「利益が増えた!」「利益が減った!」という見方しかできず、それに対する経営判断は、
「売上が減ったから、売上を増やそう!」
「利益が減ったから、コストをカットして利益を増やそう!」
といった短絡的な判断しかできず、経営者として戦略的に財務判断をすることはできなくなります。

では、財務的な判断を間違えてしまった後継者の事例をみてみましょう。

(事例)経営者としての財務の見方をしらない後継者が犯してしまった間違いのケース

会社名:株式会社S和菓子店
会社規模:売上高5億円、従業員20名
業種:和菓子の製造販売・小売り

吉田B作(息子) 40歳:代表取締役社長 (2年前に事業承継)
吉田K太郎(父親) 65歳:前社長(現在は引退)

※ここでは便宜的に「決算書」≒「財務諸表」として表現しています。

吉田B作さんは、S和菓子店の後継者として2年前に親であり先代社長である吉田K太郎さんから、会社の代表権を受け継ぎ代表取締役となりました。吉田K太郎さんは、代表退任後は地元の市議となり、政治活動を中心に活動をしており、今では会社にはほとんど来ていません。
B作さんは、大学卒表後、大手菓子メーカーに就職し6年勤めた後、K太郎さんに呼ばれ29歳の時にS和菓子店に入社しました。B作さんは、大手菓子メーカー時代から営業畑1本で、S和菓子店でも営業経験を活かして売上に貢献をしていました。
そんな売上に執念を持って営業をするB作さんを、徐々に認めていったK太郎さんは、事業承継を決意し2年前に代表交代をしたのでした。

B作さんは、営業には自信がありましたし、営業部門を率いていたので社員マネジメントにも自信が
あったのですが、財務や法律、株式のことなどは、あまり勉強をしたことがありませんでした。

B作さんは、経営者としては、苦手だけどやっぱり決算書くらいは見れないといけないな、と思い、勉強を始めました。知人に紹介された財務セミナーに参加したり、「決算書の見方」という本を読んだり、顧問税理士の先生にも自社の決算書を見ながら、その見方を教えてもらったりしました。

B作さんは、勉強のかいもあり、勘定科目の意味を知り、それぞれの科目が何を意味しているのかもわかりました。また、売上から売上原価、販売費や一般管理費を差し引いて営業利益になるなど、損益の構造についてもわかり、資産と負債と純資産の貸借対照表の構造についてもわかりました。

「なんだ、ルールがわかれば簡単じゃないか!」
「決算書なんて簡単じゃん!」

そして、それから2年がたちました。

「売上が下がっている!」「営業利益もさがっているじゃないか!」
B作さんは、決算書を見れるようになっていたので、会社の業績がどれくらい悪くなっているかしっかり理解することができました。

「営業利益が下がっている場合は!?」
税理士の先生から聞いたことや本で読んだことを思い出していました。

「まずは売上を回復させるためにどうするか考えよう!」
「あと経費を見直さなければ!!!コストカットしないと!!!!」

「売上を増やすために、売るための商品数を増やそう!」
「新商品をつくるために新しく機械を導入しよう!!!」
「店舗を改装して、清潔感を出して新しい顧客層にアピールしよう!!」
「コストを見直してカットした分で、営業マンを雇い入れよう!!」

B作さんは、営業利益の回復をさせるためにいろいろな仕掛けを試みました。銀行からお金を借りて、新しい機械を導入したり、新しく営業マンを雇ったり、店舗を新しく改装したり、その結果、商品数を増やして、新商品を打ち出したことなどで珍しさもあり、売り上げは上昇したのです。
それに合わせて利益も増加し、営業利益は、2年前と同水準に回復したのです。

「ふう、なんとか営業利益がもとにもどったぞ!」

B作さんは、一時ほっとしました。

しかし・・・・利益が出ているはずなのに、お金がない。

「お金が減っていっていないか!?」

「なにかおかしいかも?」と感じながらも、「利益が出たからよかろう!」と思い。
そのままにしていたのです。

そして、そのさらに3年後・・・・・世界的な不況の波が押し寄せてきたのです。
S和菓子店も、不況の波にのまれ売り上げは落ち込みました。そして、すぐに銀行に借りたお金が返せなくなってしまい、資金不足で眠れぬ日々が続くことになってしまったのです。

B作さんは、つぶやきました・・・「不景気にならなければ、こんなことにならなかったのに・・・」

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さて・・・
B作さんは、苦しみを不況のせいにしていましたが、本当に不況が原因だったのでしょうか?
一要因であったかもしれませんが、B作さんの財務的采配に間違いはなかったのでしょうか?

今回の事例のポイントは、B作さんが、貸借対照表をまったく見ていなかったということです。
また、経営者としてわかっておくべき財務の見方がわかっていなかったことです。

今回ご紹介するポイントは3つ

●利益しかみていなかった!

まず、B作さんが利益しか見ていなかったということです。
財務諸表の見方がわかったはずなのですが、利益が減ってその対策に早くにとりかかったのは、とても素晴らしかったですが、一方で、それ以外の借入金や在庫などは、増えても気にしませんでした。
長年、営業畑を歩いてきた経営者にありがちな見方ですが、利益を追求するのにとらわれて、それ以外のところが見えていなかったのです。

●借入金や在庫、機械(資産)の増加の意味をわかっていなかった!

借入金の増加は、わかりやすいかもしれません。返さなければならない借金が増えるということです。
しかし、B作さんは知らなかったのです。お金が返せなくなったら会社がつぶれるということを・・・。頭ではわかっていたかもしれませんが実感としては持っていなかったかもしれません。

また、当然商品数を増やしたら在庫が増加します。在庫の増加は、商品の増加なので売ることを考えたらよさそうですが、財務的にはその分現金が減るということになります。B作さんはこのバランスを考えていませんでした。

また、機械を購入することで資産の増加についても、B作さんは借り入れたお金で購入できた、程度に考えていたでしょう。しかし、在庫もそうですが資産が増加するということはそれだけお金を使ったということです。
B作さんは、利益の状況は見ていたけれども、会社の財務状況は見ていなかったのです。

経営者は、貸借対照表で経営を語るべきなのです。
B作さんも貸借対照表を見ながら、借入金、在庫、機械のコントロールをするべきでした。

●投資とリターンがわかっていなかった!

活きたお金の使い方をしているかどうかは、「いくらお金を使って、いくら利益を生み出したのか?」を見なければわかりません。
「いくら利益を生み出したのか?」だけでは、お金を活きた使い方をしているかわかりません。
もっと言うと、本当にもうかったのかどうかわからないのです。

例えば、あなたが1億円をもっていたとします。

年間5千万円の利益を生み出すA社と
年間2千万円の利益を生み出すB社のどちらに投資をしますか?

これは、少し意地悪な質問ですが、
私ならこの情報だと投資できません。

少し情報を足すと、
1億円を使って、年間5千万円の利益を生み出すA社と
2千万円を使って年間2千万円の利益を生み出すB社、
これなら、どちらに投資をしますか?

答えは明白です。B社ですね。
A社だと思った方間違いです。

なぜなら、儲かる会社かどうかは、いくらお金を使っていくら利益を出すのか?
それが大事だからです。
A社は、1億円に対して5千万円の利益なので、50%
B社は、2千万円に対して2千万円の利益なので、100%
となり、B社のほうがA社とくらべて2倍儲かるのです。
1億円もっていたら、B社と同じような会社5社に投資できると考えるとさらにわかりやすいと思います。

では、S和菓子店で考えてみましょう。
B作社長は、利益が減ってしまったため、在庫と機械を増やして利益を回復させましたが、
実際は使ったお金が多額であったため、本当は利益をもっと生み出す必要があったのです。
生み出した利益が小さかったため、不況時に回収できなくなり、借入金が返せなくなり、資金難に陥ってしまったという、負のストーリーになってしまったのです。

これは、経営者の財務の見方を知らない後継者がよく陥る罠です。

B作さんも経営者としての目線で決算書を見て、財務をコントロールしていればこんなことにはならなかったはずです。

後継者の皆様、経営者の皆様、財務は経営者の目線で見る方法を身につけてください。

後継者の学校では、後継者(経営者)のための財務をわかりやすく学べます。
もっと具体的な説明や、ほかの財務の大事なポイントについて、まだまだお伝えしたいことがたくさんありますが、それは本講座のお楽しみということで。

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